B05. モチベーションを高める
- Professor M
- 1月15日
- 読了時間: 4分
更新日:1月26日
モチベーションを高めることによって学習の質や量、行動の質や量が高まり、困難にもチャレンジするようになり、その結果、パフォーマンスも向上するといわれています (Norsworthy C, et al. 2021; Wulf G & Lewthwaite G. 2016)。
モチベーションを向上させることはスポーツや勉強、仕事でのパフォーマンスを向上させる重要なカギとなります。一方で、モチベーションは目標のストレス強度によって大きな影響を受けます。無理な目標に対してモチベーションは湧かないし、簡単な目標にもモチベーションは湧きません。
さて、練習に行こうとすると憂鬱になるとか、周りのレベルが高すぎる、または低すぎるとか、試合の相手が強すぎるなどの理由で、意欲がわかないということがあります。どうすればやる気がでる、モチベーションが上がるのでしょうか?

モチベーションを上げるには、「自分はうまくできているし、周りも褒めてくれている。もっとできるはずだから、もっと頑張ろう」というように、自分に自信を持ち、さらに高いレベルに行くことができるという思いが重要になります。
そのためには少しチャレンジングな目標を設定して実行します。ここで注意しないといけないことは、周りの人たちのレベルは自分ではコントロールできません。従って目標を自分自身で頑張れば達成可能なことに設定して、それに向けて集中して行動することに努力することがモチベーションの向上につながります。
そしてその行動・努力の結果については、良かった点に注目するというポジティブなフィードバックが重要になります。うまく行かなかったことに注目するだけではやる気は起きません。うまくできたことに注目することで、「おお、できるじゃないか」「うまくやったな」という自分を褒めることです。そのことによって、「もっと高いレベルのパフォーマンスに挑戦しよう」とか、「うまく行かなかったところを修正できればもっとうまくなれる」というモチベーションが上がります。

また、自分の良かったパフォーマンスを録画して、自分をモデル(セルフモデリング)にしたベストパフォーマンス集を作成しておくことも良いと考えられています。
それを観ることによって、自分はできているという自己効力感や「頑張った甲斐があった」という内的報酬が生まれ、また、このようにすれば高いレベルのパフォーマンスができるという前向きな気持ち(内発的モチベーション)にもなります。さらに、不調に陥ったときも自分をモデルにしたビデオを観ることによって良いときの動きを取り戻していくこともできます。良いパフォーマンスのビデオをみてビジュアライゼーションしておくことで、試合などで緊張した場面でも成功のイメージを抱くことに役立ちます。
コーチやトレーナーに指示・提案されたプランにただ従うのではなく、意見交換して納得して実践するとか、自分で考えて選択・決定すること(自律性)によって、「誰かにさせられた」ではなく「自分の意志や自分の考えでやり遂げられることができた」という達成感が得られ、自己効力感とモチベーションが高まります。そして、表彰されるとか、賞金を貰がう、コーチから褒められると誰でもうれしいと思います。これらを外的報酬といいます。
外的報酬によって、自分が認められているという感覚や自分ができたことを改めて認識できることから、やはり自己効力感を高め、次のチャレンジもうまくいくはずだという期待値は向上し、またやってみよう、チャレンジしてみよう、という外発的モチベーションが高まります。

スポーツドキュメンタリーや映画で、大事な試合の直前、ロッカールームで選手たちが不安や緊張で張り詰めているという場面を良くみます。まさにエネルギーが充填されているが静かな状態、嵐の前の静けさです。
そしてヘッドコーチが選手たちに向かってペップトークを始めます。戦いを直前に闘争か逃走反応の状態にある選手たちに、達成してきたことを振り返って自信と覚悟を呼び覚まし、鼓舞し、モチベーションを上げて、闘争の方向に持って行きます。
下を向いて静かに座っていた選手は立ち上がり、落ち着かずにうろうろしていた選手は立ち止まり、輪になり、闘争の表情に変わり、筋肉が盛り上がり、戦う意志が統一され、皆で雄叫びを上げて、狭いロッカールームから大観衆の待つ試合会場に走っていきます。